今日は、いしいしんじの『麦ふみクーツェ』を読み終わった。
いしいしんじとの出会いは、たしか1年半くらい前に新宿のvillage vanguardで『ぶらんこ乗り』の文庫本をジャケ買いした時。
ん?もっと最近だったかも。忘れた。
童話のような口調でかたられるいしいしんじの物語は、奇想天外と現実のギリギリボーダーラインをちょっとむこうサイドに超えてしまったところあたりを描いている。
いそうでいなさそうな登場人物。
ありそうでなさそうな舞台。
でも、それがただのファンタジックなお話になってしまうことはなく、逆に物語をとても普遍的にしている。
前にもちょっと書いたけど郁子のかじき釣りの歌詞を書いたのも彼だ。
私は文学ってぜんぜんまったく詳しくなくって、そんなに沢山の作家さんを知らないのだけど、根がぜいたくなので、文章がとってもうまくて自分の好みにぴったり合ってないと嫌で、人気のある作家さんでも書き方が気に食わないと全然読めない。
そんな私の中で最も気持ちよい文章を書く人ランキングTOP3(順不同)が
梨木香歩、宮部みゆき、いしいしんじ さん。
綺麗で透明感のある言い回しが大好きだ。
いしいしんじは、その中でも特に、あとちょっとやりすぎるとこねくりまわして鼻につくような感じになってしまいそうなのに、その手前のちょうどよいところで私の心をくすぐる。
大好き。
今回の麦ふみクーツェは、けっこう読むのに時間がかかった。
奇想天外なようでいてわりと淡々とした話しが続く。
次がどうなるのか?!と興奮してページをめくるような類いの話しじゃないのだけど、最後にきっとあ〜読んでてよかった!と思うに違いない、と信じて読んでいた。
そして、今日、やっぱりあ〜読んでよかった!と思った!
名言が沢山出てきたけれど、特に心に残ったのは
音楽会のアンコールで、照明が落ちた闇の中で、楽団のメンバーと、がらくたを持ち寄った観客がいっせいに音を鳴らして合奏する場面の後の
「音楽のよろこびの大きな部分を合奏のたのしみが占めている。なにかにつながっていること、それをたしかめたい、信じたいがために、音楽家はこれまで、そしてこれからも、楽器を鳴らしつづけるのかもしれない。」
というところ。
この世には無数の音がある。
当たり前だけど、朝から晩まで自然の中でも街の中でも至るところで音が鳴っている。
座禅を組んでいて、このことに改めて気づいたのだ。
禅の真髄はつかめなかったけど、じぃっと座っていると、いつもは気づかないような音が鳴っていることが分かって、その中に身を任せて自分がここにあるってこと自体に感謝しよう、と思えた。
ましてや自分でも音を鳴らしてそういう営みに参加できるなんて。
合奏が上手くいったときの喜びはたしかに格別!
でも
「たったひとつの『ひどい音』、一瞬の音とそのこだまが、あらゆる吹奏楽の音色、それまで過ごした生活すべての彩りを、真っ黒に塗り替えてしまうってことが、この世ではまちがいなく起こり得るのだ。」
というのもまた真実で・・・
『ひどい音』をもう聞いてしまった身近な人の気持ちを思うと泣けて来た。
でも、また生きていればそれを新しい色に塗り替えることも出来るはずだ、という希望もちゃんと示されている。
そして
「へんてこはさ、技をさ、みがかないわけにはいかないんだよ」
「それがつまり、へんてこさに誇りをもっていられる、たったひとつの方法だから」
そうだね。へんてこな人間は、誇りをもつために、自分がへんてこであることにもきっと意味があるんだと証明したくて、技を磨いて行くんだな。
いつぞやのイベントで中村隊長さんが「自分の正しさを証明したくてここまで頑張ってやって来た」て言っていたことを思い出した。
その時私も何だかすごくわかるわかるわかる!と思ったんだ。
それをわかりやすくいうと、きっとつまりこういう事なんだなぁ。
そうか・・・がんばって技みがこ・・・うん。
本当によい話しで、胸いっぱいで電車を降りた。
さぁ、今日の目的は、高校時代からの親友の結婚式の余興でピアノ・バイオリン・フルートの合奏をすることになったのでその楽譜探し!
なんてタイムリー!ちょうど合奏したくなったところで、合奏の予定が入るとは!
結局、「こんなのあったらいいなぁ」と思ってたのにぴったりのスコアが見つかって、今、心から練習を楽しみにしております。
バンドじゃなくて、ピアノで合奏!
なかなか無いパターンだよ〜うれし〜頑張って練習しよ〜
さらに、帰って来てメール見たら、とある友達よりとあるお誘いがあり、今もっとも言われたい言葉ランキングの第2位にあたる言葉が書いてあった!
写真を撮る人としての私を喉から手が出るほど欲しい、と言ってくれた。
お世辞もあるだろうけど、素直に嬉しい。
今日の反省は、あれほど目を配っていたのにもかかわらず、結局夕飯のおかずを焦がしてしまったこと。
そして部屋の模様替えが途中で止まったままになっていること…
明日は片付けるぞ。うし。